「で」
怒り心頭だった。
「……なんではたき起こさなかったの」
「はたッ……」
何を言うんだ、とでも言いたげな顔をしてボクの身体をつかもうとするけど、納得のいかないボクはひらりとかわして掛け布団を引っ張りワタルを布団から追い出した。拗ねてない、拗ねては、ない。
ボクが意識を手放してから、覚醒するまで既にかなりの時間が経っていたらしく、すっかり肌はドロドロからつやつやで、後処理の何もかも済んでいた布団も浴衣も新しいものに変わっていた。いつのまに。
窓につながる襖の隙間からはあたたかい朝の光が少しもれ出していた。ほんと、いつのまに。
「せっかくいいところだったのに……」
「きみの体力はもう底を尽きてただろう」
「ボクじゃなくて、きみがだよ!」
あと少しでワタルの糸がぷっつんと音を立てる気配がしたんだ。おしかった。ほんとに。
鋼よりも固い糸だ。今回は本当に自信があった。のにだ。
「……気絶したかのように寝てしまえば、起こすなんてできないよ」
「そうやってまたボクのことを優先する。きみのぐちゃぐちゃになったところを見せて欲しかったな!」
「ぐちゃぐちゃ……?」
ワタルがきょとんとした。
「十分羽目を外してたんだけどね」
「……」
「信じてないだろ」
ははっ、とワタルが笑う気配がした。
「自分が着付けた浴衣を脱がして喜ぶ男だ」
「ッ……!?」
ぎょっとした。いま、なんて。
「……興奮、してたの?」
「だいぶ」
くるりと、ワタルの方に向き直ると、律儀にも正座をしてボクを見下ろしていた。
「……許してあげようかな」
「きみの機嫌がよくなるスイッチがときどき分からなくなるね」
「……ふふ、そうかな。分かりやすいと思うんだけど」
いつもとは違う、ワタルの下ろした前髪に手を伸ばした。こうするとちょっと幼い顔に見えるな。
「……また、一緒にお泊まりしようよ」
「あぁ、ぜひとも」
いつだって、どこだって、関係ないよね。溺れる温かさは、きみの肉体に秘めている。
「ワタル」
微睡んできた。どうせ、夕方には帰ってしまうのだから、いまだけもう少し、浸かっていたい。
追い出したワタルを引っ張って、よたついた彼に改めて布団をかぶせてあげた。
「好きだよ」
「……おれもだ」
目を瞑った。やさしい温かさだ。お湯にとぷん、と足を滑らせたように落ち着く。
今は、これで十分。朝日を遮断するかのように、きみの肌に身を寄せた。
鼓動が大きい。きみのか、ボクのか、それは分からない。
ただ二つの心臓の存在が、ひとつの鼓動に重なるのは、なんだかキミがボクの一部になったようで、不思議な感覚だった。
「わたる」
呂律が回らなくても、名前を呼んだ。きみが返事をしたはずだけど、水音に浸かったようにおぼろげで、反響する。どくんどくん、と、鼓動の音が、反響する。
やさしい真綿に包まれた赤子のように、安心してしまったぼくは、きみに抱かれたまま、深い眠りにのぼせていった。
