ほてりの鼓動✱r18 - 1/4

⚠以下注意要素を含みます⚠

・結腸責め
・潮吹き
・軽い濁点喘ぎ
・温泉内での性行為

大丈夫なお方だけご覧ください。

 

 

 

 

 潮の香りが変わった。ジョウトにもカントーにもない、自分のよく知る土地とは違うあたたかい潮の香りが、ぶわっと、全身を包んできた。
 自分の身を運んでくれているカイリューもそれを感じているようで、寒さの苦手なこの子たちにとって心地よいもの。気持ちよさそうに唸り声をあげた。

「もう少しだな」

 疲れていないか、と労わるように撫でると喜んで速度を上げてくれた。風を切って見えた景色、そこは、緑に溢れる彼の生まれ育った土地が広がっていた。

 

 

 ほてりの鼓動

 

 

 

 

 風の強さに目を細めると、浜辺に、カイナシティ、もう目の前だった。夕焼けの光を反射して橙色に染まりあがった波は美しく、キラキラ揺らめいている。陽の落ちる早さを知る住民は、浜辺から既にほとんど姿を消していて、ぽつりぽつりと、カイナシティには灯火が灯っていく。
 そんな人もまばらの中、海から突き出ている桟橋にぽつん、と一人の男が立っていた。
  遠くからでも分かった。彼も、おれを見つけたことを。
 大きく息を吸って吐いた、凛とした声をはっきりとらえる。

「ワタルー!」

 こっちこっち、と言うように手を大きく振りながらわかりやすく場所を伝えてくれる、愛しい男。
 足先が桟橋のすれすれだと気づいて、肝を潰した。少し風に吹かれれば落ちて波に攫われるんじゃないかという危なげさに焦り、急いで下降する。
 弾丸のように、真っ直ぐと。
 ダイゴの頭上をそのまま過ぎ、くるりと旋回させ、桟橋より数メートル離れたひらいた場所へ指示を出す。ダイゴを、海から引き離すために。
 カイリューの羽ばたきで、ぶわ、っと風がひとつふたつ巻き起こったところで飛び降りた。何人かが、ホウエンではなかなか見られないカイリューに声をあげていた。

「ダイゴ」

 桟橋から砂浜へ、駆け寄ってくる姿が見えてきた。いつも通りのスーツ姿に、なぜだが無性にほっとした。

「すまない、遅くなった」

 謝ると、ダイゴは嬉しそうに破顔した。

「気にしなくていい。ボクの方こそ、」

 ぱぁ、っと、彼の抱きしめようとする腕を喜んで迎えた。
 だが、思いとどまったのか、ダイゴはなぜかその腕を下ろして握手に変える。怪訝に思って、周りを見渡せば、まばらと言ってもまだ人は多い。カイナシティはちょうど、開催中のコンテストが終わった頃だったか。

「急なお誘いだったから、来てくれるか心配してたけど」

 目線を戻せば、ダイゴはおれの隣にいるカイリューに手を伸ばして優しく頭を撫でている。長い旅路にご苦労さま、とでも言うかのように。

「遠かっただろう。セキエイから……まっすぐ?」

 カイリューが気持ちよさそうに擦り寄っていた。微笑ましくて、にこりと笑う。

「ダメかい」

 対してダイゴもくすくすと口に指を添えて笑った。

「まさか、浮かれてしまうね」

 健気な言葉に、ぐっとなる。コホン、と咳払いをした。

「さて、……カイリューがくたくたなんだ。悪いけど、もう宿に向かってもいいか」
「フエンまでかなり遠いけど、大丈夫?」
「構わない」

 カイリューにお疲れ様、となだめ、ボールにしまう。ダイゴは少し考えている模様。

「むげんのふえをあいにくあの子に渡してしまったからね。途中までエアームドに乗せていってもらって、えんとつ山にはモノレールで行こう。きみは、疲れてない? 上下運動がすごいけど」
「平気だよ」

 むしろエアームドに申し訳ないくらいだ。男二人を運べるのか。と、ダイゴに聞こうとしたが、

「……ありがとうね、ワタル」

 そういって笑ったきみは、少し元気がなさそうに見えて、口を噤んでしまった。問い詰める前にダイゴがエアームドを出してしまって、俺は聞くタイミングを逃してしまった。
 杞憂だと、いいが。

 

 

 えんとつ山から徒歩でくだる道は、なんだかフスベの山間から一気にくだる45番道路を思い出して懐かしくなった。先に前を行く彼が、ときおり追いついているか確認する様子が新鮮でいじらしく、観光どころではないなと、情けない自分にびっくりした。
 それほど、二人の間には十分な空白があったと、おれは思っている。
 着いたさきは、硫黄の匂いがゆったりと流れる地域だった。故郷を思い出して目を細める。
 たどり着いた部屋には、うわ、っと言ってしまったが。

「露天風呂つき……」

 彼らしいというか、お金の使い方が大袈裟というか。
 案内された部屋はなんともこざっぱりで、親しみやすい大きさの和室だった。しかし、襖をかっぱりと開ければ外へ通じるだだっ広い空間に、ぽつん、と露天風呂が用意されていた。
 敷かれているヒノキの匂いにゾッとした。お湯の温度を確かめるに手を入れて金額を考えることをやめた。
 ちょうどいい温度だ。さっそく入りたいが、何も食べずに入るのは危ないか。
 夕飯は配膳されるとのことで、てっきり、最初はトクサネの彼の自宅でゆったり過ごすのかと思ったことを言えば、

「……なんにもないから」

 と返されてしまった。料理はできない方なのかもしれない。
 モンスターボールから出していたミニリュウが不思議そうにおれの肩から降りると、覗き込み、鼻先をぴちょん、と揺らめくお湯に浸す。
 あったかいのが気に入ったのか目をキラキラさせて今度はぴちゃぴちゃとしっぽの方をお湯に当てていた。
 そういえば、この子はまだ温泉というものを知らなかったな。
 ダイゴのポケモンは熱や水に弱い子が多いからか、ほとんどの子はポケモンセンターに預けていた。ついでに、おれも手持ちを預けてもらっていたが、まだタマゴから還ったばかりのミニリュウだけは少し心残りで、連れてきた。
 遊ばせておこう、と、そっと、俺だけ和室の方へ戻ると、ダイゴの後ろ姿が見えた。なぜか首を傾げていて、俺の方に困ったように振り返る。
 眉を垂らして笑う姿は、

「着たことないんだよね」

 一言で言うとぐっちゃりしていた。

「……浴衣を?」
「正確には自分で、かな」
「あぁ……いやに納得するな」
「小さい頃に着付けてもらったことがあったのと……あ、あと​友人に」
「ダイゴ、こっち向いて」

 ぐちゃぐちゃでふやけている浴衣の襟を引っ張ってぴん、とさせた。あとはいつものように着付けて腰紐をぐるりと通す。 帯も遅れて貝の口に結べば完成した。紺生地の浴衣と薄い乳白色の小綺麗な帯が、彼の体を綺麗に仕立てた。
 あっという間に着付けられたことに、ぱち、とダイゴは驚いたように瞬きをする。

「すごい。さすがだね。着慣れてるのかい?」
「実家関係でね。ひと通りは」

 それに浴衣はそこまで着るのに難しくないから、と言い、ほったらかしにしていた荷物を拾ってクローゼットを開ける。すでに浴衣は一着しか無かった。
 自分も服を脱いで、丁寧にたたみ、帯と浴衣を手に取った。彼とまったく同じものだ。
 浴衣を身にまとい、襟を正してしゅるりと腰紐を回す。帯も後ろ手に結んで、最後に羽織を羽織ればクローゼットを閉めた。

「え、えっ、もう着替えたのかい?」

 ダイゴが慌てて机に置きっぱなしだった自分の荷物とスーツを抱えてぽかん、としていた。

「慣れているからね」

 まじまじと、ダイゴが俺の頭のてっぺんからつま先まで見て感心する。

「でも、こういうのって少しでも下手をすると着崩れが目立つよね。ワタルは器用だなぁ」
「ダイゴ」
「ん?」

 自分の浴衣を確認するように、姿見の前でくるりくると翻している男を完全にこちらをむく前に背中を抱き寄せる。
 うん、綺麗に着こなしてるし、乱れもないね。満足したまま、後ろから手を伸ばし、すすす、と首筋から喉仏にかけて撫でて、顎を掴む。
 そのまま、上向かせた。
 見てごらん、ダイゴ。きみを捕まえる、欲に溺れた男の顔だ、と鏡越しに伝えるために。
 腕の中のきみが気づいてびく、と反応する。

「……きみに夢中な男の前で、他の男の話はするべきではない」

 例えきみの大切な友人だとしても、今回は俺との貴重な休暇だ。その上、俺もきみも、その気で今夜を迎えるのだから。

「いいね」

 鏡に映った顔は、真っ赤になって、俺と目が合う。
 いつもとは違う服、表情、様子にたまらなくなった。すっかり陽が落ちて薄暗い外の光が真っ直ぐに染めて浮き彫りになった色は白柔肌。紺地と対照的なその色が、張り付いたうなじにキスをする。
 まだ、湯に浸からずに自分にのぼせた姿はこの上なく気分がいい。
 なんて、きみには絶対言えない話だ。