あの目が忘れられない。
あの熱が忘れられない。
胸を焦がし、喉が焼けて、皮膚がどろりと溶けていくような瞬間。
ボクは、だからこそ、他のことにさほど熱中できないでいる。
「思い出させてくれるのは、いつだってきみのような人だった」
ワタル。きみもその一人なんだ。
「欲求不満、ってものだと思うんだよね」
ナイトパーティから抜け出したあと、ワタルに見つかってしまったボクは、大人しく彼に捕まり、のんびりと暗いレンガ道を歩いていった。
先を行く背中に声をかけるけれども、振り払うことすら許さないよう、ワタルはボクの手を強く握ったまま、前を歩く。
しっかり繋がれた手のひらの皮膚の感触。ゴツゴツしている。海に水分を持ってかれていたのか、今日は少し乾燥してパリパリしていた。
ぎゅ、っと、握り返して足を止めると、ワタルもようやく足を止めてくれる。
「ムラムラする、って、言えばいいのかな。いや、それとも……」
振り返らないワタルに後ろから近寄って、そのうなじに腕を忍ばせ、大きな背中を抱きしめた。肩には顎をのせ、耳元に口を添える。
「きみを、もっと……──ん……ッ……」
もうしゃべるな、と、勢いのよい振り向き際にキスをされる。手は繋がれたまま。
ボクはとても気分が良かった。
数秒。舌を絡めることはせず、くちゅ……と果肉を潰した音を引きずりながら、口が離れていく。物足りなくて、目線だけで促した。ワタルの目は、まっすぐとこちらを見ていた。今度は少しだけ首を傾げて、さらに誘う。
ワタルは、それでもなびかない。なびくはずもない。
「……責任取ってよ」
「責任……だって?」
「そう。いい提案だろう?」
「いい性格してるの言い間違いじゃないか?」
潮の音が、すぐ後ろにあった。パーティの騒音はもう聞こえない。静かな夜には、きみと、ボクの息つがいに、波のこすれる音だけ。
ボクたちが寝るために用意した部屋も、すぐ近くにある。あともう、少し。あと、ほんの少し。
「楽しんでるようで、なりよりだよ。ダイゴ」
何も喋っていないのに、どうして分かるんだろう。
「だけど、きみが本当に望んでるのは」
こういうことでは、ないだろ。と、声に出さなくても、はっきり分かった。
なるほど、ボクたちは、どうやら言葉以外でも会話ができるらしい。
「知ってるくせに」
だから、すこし煽って、うなじに手を絡め、
「あえてはぐらかす」
きみの毒のような感情を、探っている。
「そういうところに、惹かれたんだ」
キスを深める。ワタルの唇を舐めると、ぴり、と痛みが走った。あぁ、そういえば、自分の唇の皮膚が爛れていたんだったかな。唾液と汗が染みて、ヒリヒリする。
今度はボクがワタルの腕を引っ張っていった。ワタルは体格がいいから、思うようにはついてきてくれないけど、まるで進化したばかりのボスゴドラがあまりにも重くてなかなか連れて歩けなかったことをふと思い出した。でもボスゴドラは、ボクの言うことを聞こうと健気だった。ワタルは、ボクの手持ちでも、何でもない。
コテージの正面玄関を通るよりも、海へ直接繋がれたウッドデッキを経由した方が早いことに気づいたボクは、せっかちな性格もあって、砂浜から大きく迂回した。
サンダルを脱ぎ捨て、ウッドデッキの上を裸足であがる。カーテンを開けっ放しにしていたから、部屋は丸見えだ。まずはシャワーを浴びようかな。そう思ってテラスドアに手をかけるけど、ガタガタ、と鳴るばかりでビクともしなかった。
「鍵……」
「開けっ放しにしているわけないだろ」
唖然としているボクに、ワタルは手を取って、引き返そうとする。
「玄関から戻ろう」
「ダメだ」
ボクは、足に力を込めた。部屋にすぐ入れないのは、想定外だけど。
「もう、……その、」
はやく。と、言葉を出せずうつむいてしまうと、
「……そんな顔、されるとな」
手を伸ばしたワタルは、ボクの頬に触れ、耳の裏をするりと撫でながら顔をあげさせた。見つめあったまま、彼はボクの髪を梳いて、耳にかける。優しい手つきに、ゾクゾクと痺れた。
「ここでしよう」
ワタルが、やっと折れてくれた。そういう気分に、ようやくなってくれた。本当に感情の揺らぎが少ない人だな。だけど、それだからこそ一緒にいて楽しいこともある。
妥協案は、ウッドデッキに置いてあったビーチチェアだ。ボクが先に座ると、ワタルがすぐに覆いかぶさってきた。
かなり狭くて、バランスを安定するにボクがもぞもぞしていると、ワタルが、ふっ、と笑った気がした。灯りのないウッドデッキでは、よく表情が見えなかった。
「……いま何考えたのかな?」
頬を両手で挟む。こころなしか膨らんでいた。やっぱり、笑っていたな。
「いや、何も」
「へぇ……?」
頬を掴み、軽く引っ張る。ワタルは吹き出しそうになるけれども。
「いやらしいこと、考えてた顔だね。その顔は」
ワタルは目を細めて、なにかをぼんやり思い出しているようだった。
「いや、なに……きみの肺の小ささを実感してた」
狭いビーチチェアに無理やり二人一緒になって乗り上げてるせいで、ボクとワタルの胸同士は、ぴっとり密着していた。
ワタルに言われて気づく。呼吸をするたび、相手の胸の膨らみの浮き沈みが伝わってくることを。そして、胸が張り裂けそうなぐらい、鼓動がドクンドクンと音を立てていたことを。
「キスをするとき、……いつも、」
ワタルが、まつ毛を伏せて、ゆったりと呟く。誰にも聞かせるつもりはないように、囁いた微かな声。
「おれより息切れするのが早い理由が、分かっただけなんだ。本当に、可愛らしい肺だな、って」
「……すけべ」
「きみもだろ。人の喉仏に熱く目線をやるのは、なかなかだと思うけどな」
ワタルが、ボクの背中に手を回してくる。トン、と腕で引き上げられるように抱きしめられると、ワタルの肩口に鼻がぶつかった。
クラッとした。
「ワタル、いい匂いがする」
首筋にキスをしながら、すー、と深く息を吸うと、彼は首を傾げた。
「おれも大概、汗の匂いが酷いはずだが、」
そういえば、ボクを見つけたときの彼は汗でびしょびしょだった。まさか、町中走り回ったのかな。まさか、ね。
「本当は、シャワーを浴びたいけど」
うなじに手を絡める。思い出したことはたくさんある。昨日のことも、今日のことも、さっきのことも。走馬灯のように、蘇る。
「きみの匂いを、今日はずっと、感じていたい……」
こつん、と、おでことおでこをぶつけた。
それから、指で頬に触れる。きみの体温は熱かった。ボクのつけている指輪が冷たいせいなのか、こうすると、きみはいつも少しだけ、ほんの少しだけ、たじろぐ。
だから、いつの間にかセックスをする前の合図として、癖になってしまった。
「きみの匂いが、ボクにまとわりついて、ボクの匂いが、きみにまとわりつくのが、こんなにドキドキすることだなんて、知らなかったよ」
きみの一つ一つの行為の意味が、分からなくなるときの方が多い。だから、それを一つずつ暴いた瞬間は、たまらなく嬉しくなる。勝負に勝った気持ちとよく似ている。
だけど、分からないまま、グチャグチャにされたいときもある。
きみだけだよ。こんなこと、思うの。
きみだけだ。
「このまま、一緒に混ざっていきたい。ボクも、きみも、どっちの匂いかなんて、どうでもよくなってしまうぐらい。めちゃくちゃに」
ドロドロに、してほしい。
「きみは、匂いを嗅ぎ分けることも、人を見つけるのも、とても上手な人だから」
「……おれを嗅覚が一際優れたポケモンかなにかと思っていないか?」
「あれ、違う?」
パッと、肩から顔を離して、からかうように明るい声を出す。
「人間じゃないと思っている節はあるな。でも、」
浮かせていた背中を、椅子の背もたれに垂らしていき、今度はボクがワタルを抱きしめた。
「ワタルは、ワタルだから。関係ないよ」
ちゅ、とキスをする。
「理由になっていない」
背もたれに背中を預けると、ワタルがとうとう、指を下に滑らせていった。脇腹から、腰の後ろ、そして、太ももを大きな手で撫でていく。
「ぅ、……く……」
ハーフパンツの中へ、熱い皮膚を滑らせていく。指の皮膚は硬く、やっぱりゴワゴワしていた。くすぐったくて、おもわず笑いそうになる。
すす、すす、と、少しずつ、なじるようにハーフパンツを捲るか捲らないか、じれったく太ももをさすってくる。
「んぁ…………」
膝の裏から太ももの付け根にかけて、辿るように、手のひらと指を覆う硬い皮膚が、うす皮を破かないように優しく、やさしく。
じわじわと、彼の熱が伝わってくる。
「……もどかしい」
「せっかちだな」
「これじゃ、あっという間に朝になっちゃいそうだよ」
そしたら、段々と明るみに晒された空の下で、きみの表情がはっきり見えるだろう。それもまた楽しみだけど、ワタルに今のボクの顔を見られたくはなかった。
きっと、酷く欲情した顔をしているだろうから。
「少しでも、長く、」
喉にキスをすれば、ワタルがぴく、と震えた。歯を使って、軽く食む。モゴモゴとこごもった声で言う。
「きみを、ボクのものにしてみたい」
「……そうか。……」
ワタルは、ボクの鎖骨を舐めて、じゅ、と、吸った。
「ッ……ぁ」
吐息を漏らすと、カシャン、と胸に何かぶつかった。ネックレスが揺れている。外すのをすっかり忘れていた。
「待って、外す」
「邪魔じゃない、……そのままで」
ワタルが顔を離すと、鬱血した肌があちこちに散りばめられていた。鎖骨あたりの薄い皮膚は、噛み痕で真っ赤だ。暗くてもよく見える色だった。
「ん、……ん……ッ……ふぁ、す、……吸いすぎ」
鎖骨から、下へ。べろりとタンクトップを捲って、お腹の皮膚に、股の間、ふとももを舐め上げていく。
「っ、ま、って」
そこ、人に見えるところだ、って気づいたときには、たくさんついてしまった。
悔しくて、ボクもワタルの喉に今度は噛み付いた。
ワタルも負けじと、ガジッと唇を噛んでくる。皮膚が破けたところだ。
「ッぃ、たい」
ワタルをべり、と剥がした。またキスをしてこようとするのを押し返した。
「染みる……って、……ん……ぁ」
両手で、今にもまた鎖骨あたりを噛み付こうとしている大きな口を塞いだ。まるで、待てをされたポケモンみたいだ。じっと、黒い目二つだけで見下ろしてくる。
ワタルの目は、瞳孔が広がり、ギラギラしていた。光を少しでも取り込もうとするときの目だ。ワタルは、ボクに比べて暗闇に慣れるのが僅かに遅いから、こうやって無理やり瞳孔を開こうとする癖がある。
それが、ボクの表情を引き出したいあまりにさらけ出した彼の一面だと考えると、じんわりと愛おしさが胸で広がっていった。
「きす……いたい、……しみ、ッて……ぅ、あッ……」
ワタルがボクの両手をどけて、ぎゅ、と握りしめてくる。
「知ってるだろ。きみが、昼にあんなキスをしたから……」
「そうかい」
ワタルは、満足気に笑った。少し、驚く。
「……わざと?」
彼は黙って笑うばかりだ。真っ暗な中で、ワタルの目だけが不思議と揺らめいていた。
「なら、……残さず食べて」
満足してないのは、きみもそうなんだね。だったら、
「ボクを、まるごと食べて、ごらんよ」
効果はばつぐん。ワタルの目つきが鋭くなった。
「……言ったな」
ワタルが、ボクの左足を掴む。高く持ち上げて、自分の肩に乗せた。
「覚悟しろよ」
べろ、と、ハーフパンツが捲れて、剥き出しになった太ももの肉を掴んだワタルは、そのまま牙を晒して。
「い゛ッ……!」
ガブ、と、思いっきり噛み付いた。食い込む歯が、付け根の筋、骨までえぐれそう。
「い……ッ……ぅ、ぐッ……!」
痛みが走って足を思いっきり蹴りあげた。でも、ワタルの手が物凄い剣幕で押さえつけてくる。足の先しかバタバタすることをできず、ビーチチェアが酷く軋む。ワタルが口を離して、また噛み付いた。その度に、大袈裟に腰がびく、びく、と跳ねる。
「ん……ッ……ぅ……! んッ……!」
でも不思議にも、一度、二度、三度までは痛かった感覚が、繰り返されるにつれ、少しずつ。じんわりと、
「ッ……ぁ……」
きもち、よく、なる。
ワタルの目が、ボクを見上げた。赤い舌をちろりと出せば、肌に散りばめられた赤い噛み跡を、ぺろ、と舐めた。傷を癒すように。
白い肉に、赤い牙の痕が点々と浮かび上がる。ワタルが舐めると、唾液が染み込んで、ピリピリと刺激が走った。
すっかり、太ももは真っ赤になってしまった。
最悪だ。長いズボン、持ってきてたっけ……。
「なに甘いことを」
「……?」
口に、出してた? なにを、ボク今言ったかな。
「外に、……いや」
ワタルが、足を肩から下ろした。ボクはそれを疑問符を浮かべて見つめる。
暗闇に光る、ワタルの目は鋭く、威圧でぐつぐつしていた。
「ベッドから、もう、出さない」
ワタルは、タンクトップがめくれたままの素肌に指を滑らせた。ぶつかったネックレスに揺れて皮膚に擦れる感触が、くすぐったい。金属が肌を舐め上げる冷たさに、ブルッと大袈裟に身体が震えた。
「ッ……、ぅ、」
ワタルが、寒さでぷっくりと膨らんでいる乳首に噛み付いた。
「ぅあッ……ん、ん……」
腰が自然と揺れる。舌でなじられ、立ち上がってきたそれを弄ばれる。おそるおそる目線を下にすると、ぷっくりと赤くなって、てらてらと濡れていた。いやらしく、腰がズン、と重くなる。しこりができていったそれを、ガリ、と噛まれた。ビグ、と掴まれている太ももが跳ねる。
「ッ、……や……」
そのまま、上から下にすくい上げるように舐められて、腰に甘い痺れが走った。
唇を噛んだ。
「………ん、ぐ……ッ」
忘れていた。唇には、ワタルが噛みちぎった傷がある。息がじんなり荒らげてくる。
「ひと言、ひと言、ちゃんと教えてくれ」
お腹と胸の肌を撫でながら、その様子を見てワタルが笑った。
「きみは、すぐに隠してしまうから」
「それは……ッ……きみも、そう、でしょ」
「おれは、かなり、晒しているよ」
落ち着いた声とニコリともしない顔で、ボクを見下ろしているワタルは真剣そのものだった。
「たりないよ……全然」
「欲張りだな」
ワタルが、そう言って水着のポケットから滑り出してきたものにぎょっとした。香油だ。
「それ……どこで」
彼がそんなものを常に持っているわけがない。どういうこと。なんで、どうして。まさか。
──ワタルさん
甘ったるい声を、ふと、思い出した。
ワタルは答えない。瓶をひっくり返して、とろ、と出てきた液体から、かぐわしい匂いが漂った。この島ならではの独特の強い匂いに、顔を顰めた。
「それ、使うのはよしてよ」
香油を落とそうとする手を掴むと、ワタルが目を見開いた。ポタ、と手のひらに一滴とろみのある液体が落ちた。それでも、かなり匂いはキツく、鼻がヒクヒクした。
「……」
「……」
ゆるゆると股を開いて、ワタルに差し出す。
「ボクのココ、使って」
すっかり、牙の噛み跡やらキスマークやらで真っ赤に染まった太ももを見せつけるようにすると、今度は、彼が顔を顰めた。
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「ッ……こら」
それならばと。ワタルの下着を引っつかむ。下にずりおろして、腰を折り曲げ、口に咥えようとしたのを、べり、と剥がされる。
座り直して、もう一度、股をゆっくりと広げた。ワタルがため息をつく。
「ここに、挟んで」
「衛生的によくない……」
「じゃあ海水で中、ほぐす? 海辺に移動しようか。どいて」
「きみ……」
ワタルをどけようとすると、彼はもう一度深くため息をついた。その隙に、ボクは香油をかっぱらって、海に向かってぶん投げた。
カシャン、パリン、という音が、暗闇の奥で響く。
「きみッ……」
「虜にさせてあげるよ」
ワタルの下を無理やり脱がす。ボクも、ハーフパンツを下着ごと脱いだ。
目を瞑った彼は、呆れたように笑っていたけど、やっと、ボクの股の間に自身のものを挟ませた。
「ッ……ふ、…………」
「ッ……」
ゆっくり、お互いの性器を擦らせるように腰を揺らす。前へ、後ろへ。挿入していないのに、おしりの穴を辿ったり、性器がこすれるたびき、期待が期待を呼んで、胸がドキドキした。 ぐじゅぐじゅとした音が響く。
まず、ワタルが興奮していることに、ボクもすごく興奮した。焦らされることは、あまり得意じゃないけど。
「ぅ、……ぁ、アッ……ん……んん、……あッ」
「……ッ、……」
先からトロー……と一緒になって蜜が垂れてくる。
ボクの太ももの間で擦るうちに、徐々に勃ち上がって、色づいた彼のモノに手を伸ばす。
ぎゅ、と握るとワタルが少し眉をしかめた。
「すごい硬い」
ふふ、と笑った。
「やっとその気になったんだね」
「まさか」
ワタルが、その手を優しく解く。
「最初から本気だ」
後ろ向いて、と言われて素直に従う。ボクのものか、ワタルのものか分からない先走りを、指に絡ませて、そして、つぷ、と音が聞こえた。ボクはおもわず目をつぶった。ほぐれていく感触。長くて、骨を感じる指が、入ってくる。
「ッ……ぁ、」
トントン、と、しこりを見つけた指に優しく潰される。
「あっ……ん、んんッ……」
カリッと爪の先で引っ掻かれた。
「んぁッ……! ん、んッ……〜……ッ……」
それが気持ち良くて、自然と腰はあがった。もっともっと、期待してしまう。
はやく、入れて欲しい。後ろから、乱暴に突いて欲しい。焦らせば焦らすほど、まるで拷問のように思えてくる。もどかしい。
ボクは、我慢できなくて、振り向いた。
けど。
「……ワタル?」
彼は、指を顎に当てて考え込み、じっとボクを見下ろしていた。
「……」
「どうし、……ぅわッ」
くたびれていたボクの身体を引きあげた。
向かい合って座る。どうしたんだろう。
彼がボクの腰をだっこして、腹の上に乗っからせた。ぽかんとしてしまった。
「え」
「乗って、」
耳元に、口を寄せる。低い吐息のような声で呟いた言葉にドキ、とした。
「腰を、自分で揺らして」
「なッ……」
らしくない言葉に、カッと顔が熱くなった。
「……ど、うして。珍しい」
「そういう気分なんだ。……ほら、」
そう言われて、ワタルがお尻を軽く叩いて促した。
「………………、」
正座の体勢でおずおずと腰を上げた。ペニスに手を添えて、腰を落としていく。
「ッふ……」
つ、ぷ、と異物感に少し怖気づいたけど。
「ぁッ……!!」
しこりに当たって、ぎゅ、と、中が締まる。ひく、と中が絡みつくようにうねったのが分かった。カリが穴の縁に引っかかって、足の力がガク、と落ちて身体が前に倒れそうになった。ワタルの肩にしがみつく。ワタルは、何もしてこない。じっとりと、ボクを見てるだけ。
つぷん、と穴の中で漏れた体液がお尻と太ももを伝っていくのさえも気持ちいい。
「ッ……ぅ、あ」
「すごい顔だ」
「……そん、ぁ……こと」
「続けて」
ワタルが喉仏にキスをする。ちゅ、ちゅ、と響く音に合わせて、ゆっくり、ゆっくり、腰を沈ませていく。
「ッ……あ゛……ッ!」
引っかかりがほどけて、ズブん、と腰が下に落ちたとき、 ガリリッ、と何かが削れる感触がした。たぶん、前立腺に擦れたの、かな。 ビリビリと背骨が痺れて、弓なりに自然としなっていく。
ゆっくり、ゆっくり、また、沈ませていって。ようやく。
「は、……い、った」
お腹が、ずっしりする。座っているから、なおさら伝わってくる異物感に、呼吸をするたびにきゅぅきゅぅ内蔵が圧迫して、息をするのも辛かった。
そ、と撫でると、確かに腹筋の皮から固くてずっしりしたものを感じて、ドキドキした。
「ん……ぁ……、」
ワタルが大きな手で、ボクの手の上に重ねてくる。そして、グッ、と力を込めると、中に埋まっている位置や重みを教えるかのように、お腹に手を沈ませてくる。ゴリリ、と、今にもお腹の薄い皮膚が破れそうな怖さが静かに迫ってきた。
重量感に、頭が一瞬真っ白に弾けた。
「……ここまで、入ったな」
「……ぅ、……ッぁ、う……」
「……熱いな。よく、分かるだろ」
鼓動が、はやまる。脈が熱い。ワタルの脈がお腹越しに伝わってくる。
ドクン、と。
「手を」
「ん……」
蕩けた意識の中で、お腹に置いたままの手でワタルの手を握り返した。もう片方の手も差し出すと、すかさず、ぎゅ、ぎゅー、と握られる。指の間一つ一つを、指で抱きしめるように固く繋ぐ。
「きもちいい……あったかい、ね」
「そうだな。……もっと気持ちよくなろう」
両手をボクの背中に回すと、まるで二人の腕でできた輪っかで拘束されたような形になった。
「握る手を入れ替えて」
ワタルにそう言われて、コクン、と素直に頷いた。ワタルと繋いでいた手を入れ替える。右手は彼の右手を握りしめ、左手は、彼の左手を。
そうすると、腰の後ろでバッテンを描いたように腕を縛り付けられ、さっきより密着する形になった。ワタルのたくましい腕がちょっと動くだけでも、ぎゅうぎゅうと上半身が締めつけられる。
「あ、……ッす、……く……」
ワタルが、手を揺さぶった。ビクン、と、身体が鞭打たれたように跳ねる。
「ぁ、……なに、……れ」
声が、うわずっていく。上手く呼吸ができず、喉の中で声が勝手に弾んでしまうかのような喘ぎ声を漏らした。
「ぁッ……う、うんッ……は、ぅ、ウッ、……」
ワタルが手を伸ばす。引っ張る。揺する。手を握って、また、揺する。
「握って。強く」
乱暴に腰を揺さぶられて、椅子の背もたれに背中がガスガス当たる。痛い。身体が斜めに落ちそうになったから、そう言われてワタルの手をぎゅ、ぎゅーーっと、握った。怖かった。浮いた足に力が入らない。
ワタルが指を弄ぶようにバラバラに握ってくる。すごい力で、ボクを引き寄せてくる。 しっとり滲んだ汗が、気持ちいい。
「ッ……ぁ、……ぅ……」
ばちゅ、と、肉と肉が弾けてぶつかるような音が静かに響く。弾けるような刺激で、腰は重く、背骨は痺れ、足先を丸めて堪えた。
ワタルの無骨な手のひらの皮膚が、ゴスゴスとぶつかる。横腹の角張った骨や、太ももの付け根。お尻の肉を揉みしだくと、中からぐじゅりと漏れてきた二人分の体液にまたブルル、と身体が震えた。
ワタルの分厚い皮膚が擦れる。きもちいい。すごく、すごく、きもちいい。わからなくなる。
すっかり立ち上がって真っ赤に熟れた自分のモノから、ドロ、と先走りが溢れてきたのが分かって、顔が熱くなった。腰に忍び寄る強い刺激がトントンとせりあがってくる。
もう、ダメ、
「ぅ、あッ……ぁあア゛ッ……」
泣き喚くように背中をしならせ、上擦った喘ぎ声をあげた。
「ダイゴ」
「んッ……! ぁ……」
パッチパチに白く弾けた視界。一瞬何が起こったか、分からなかった。
頭がクラクラするけれども、ワタルに名前を呼ばれてハッと頭を振る。
しならせていた背中の力を抜く。お腹を丸めると、ドロリとした感覚がした。目だけを下に向けると、ワタルとボクのお腹の間に、白濁した精液がべっとりと泡立っていた。いつの間にか、射精してしまったらしい。
「うん、……う、……ん、」
ボクが落ち着いて意識を取り戻したのを確認したワタルは、またトントン、と、腰を持って縦に揺さぶって小突いてくる。
「ひッ……、ぅッ……ん、ん!」
ぐ、ぽ、と、結腸の入口で行ったり来たりしている感覚に、また意識が遠のいていくのを、なんとか堪える。
「もっと、自分の気持ちいいところを探してごらん。ほら、わかってきたはずだろ」
そう言われて、こくん、と頷いた。もう一度、腰を高くあげようとした──けど。
バキ、と。嫌な音がした。下に重力が落ちて、ワタルの身体が傾く。上に乗っていたボクも、ななめ下に落ちる。
ギャッと、ボクの情けない悲鳴が遅れて響く。
「……なに……今の音」
身が沈んだ恐怖と、身体を縦に裂かれた快感が走って、パニックになる。ワタルは、じっとりボクを見て、そして、下を見た。
「……移動しよう」
拷問のようなセリフを付け足して。
「移動、って。……まさか、」
はやく、抜かないと。抜いて、逃げないと。でも、ワタルが腰を掴んでいた手を離さない。どうして。
「え……ぁッ……! ま……ッ」
そのまま持ち上げた。喉を潰した声を出す。さっきの悲鳴よりも酷い声だ。
ぐぽ、ッと、入口でとどまっていたモノがお腹の中でとうとう奥まで突き刺さった。息が一瞬止まる。
「辛いだろうけど」
「ぅぅ゛ッ……!!」
「耐えるんだ」
ぎゅ、ぎゅーっと、ワタルにしがみついた。足も、腕も、ワタルの身体から落ちないように。
「アッ……ア゛…おろ、して……くれ!」
ワタルが立ち上がる。重力が下から突き刺さって、ギャ、ッと叫んだ。しがみつくしかない。ワタルの肩に噛みついて、耐える。
「ッ……ぅ……ッ……!……ッぐ!」
歩くたび、お腹を貫かれるかと思って死にそうになる。何度か意識を飛ばしそうになった。から、ワタルの肩を噛んだ歯に力が入ってしまって、血の味がした。血、にしては少し。しょっぱい。
ぽた、ぽた、と、何かが目から落ちていった。海の匂いがする。 ワタルの、血?
違う。
違う。涙だ。ぼくの。
「ッ……」
「痛むか」
「ちが……う、」
べろ、と、ワタルがやさしく舌を使って舐めてくる。
「人は、海と同じ味がすると聞いたことがあるよ」
ワタルが、そう愛おしそうに何度も何度も、落ちていく涙を舌で転がす。
「それとも、きみに海の匂いがするからなのかな」
「じゃあ、ワタルも泣いて」
キ、と睨んで、
「ワタルも、きっと海の味がする」
「おれは、遠慮させてもらおうかな」
カチッ、と鍵がすんなり開いた音が聞こえた。閉まっているはずだったテラスドアを、ワタルがどうやったかよくは見えなかったけれども、ピッキングでもしたのだろう。
最初から、そうすることぐらい出来たくせに、しなかったのはなんともワタルらしいとも言えるけど。
なんだか癪に触ったから、ワタルの肩にもう一度思いっきり歯を立てて噛み付いた。
「痛いよ、ダイゴ」
「……うぉあ」
「嘘じゃないさ」
部屋の中は少しあったかかった。ベッドに近づいたワタルは、ボクを抱えたまま端に座った。洗いたてのシーツの匂いが広がる。
「よく、我慢できたな」
「ぁア゛ッ!!」
スプリングがはねた衝撃で、刺激が垂直に、腰から脳まで突き刺さる。歯が、カタカタ震えた。
「ん、むぅ……」
それを見逃すわけもないワタルが、すかさず指をボクの口に挟み込む。分厚い皮膚が、舌を絡めて、落ち着いて、と宥める。
「ゆっくり、」
「ん、んッ……」
「腰を上げて」
「ふぁ……ッ……ん……」
「沈ませる」
「んァ゛ッ……!!」
ワタルの言われたように、腰をあげる。ギリギリまで、カリが縁にぶつかるまで、あげると、ワタルが下に勢いよく引っ張ってくる。ぐぽぐぽ音を立てながら、結腸が削れるような刺激がたまらなく気持ちよくて、ワタルの手つきに合わせて、腰をくねらせ、喘ぎ声を弾ませた。
「ん。ぁ、……あッ……ぁッ……ん」
喘ぐ声は、まるで自分のものじゃないみたいだった。
「……好きなように、揺らしてごらん。ダイゴ。……そう、気持ちいいよな。中が、ほら、……きゅ、と、締まってる。熱いよな。……うん、うん」
船を漕ぐように、ゆっくりと、腰を揺らした。胸元で揺れるネックレスと、うなじで擦れる金具が汗と絡まってくすぐったい。
「ぅ、あ……」
「言って」
「ふッ……」
「唇を噛まない。吐いて」
「ぁ……、……ッ」
「素直に」
「き……、……」
もう、ダメ。心が、漏れる。
「──き、……もち、いいよ」
ビクビクする。
「とろけ、そう」
「そうだね」
「すごく、きもちよくて……いい、……、イイッ……」
「……分かるよ」
揺らして。
もっと、欲しくて。腰をすりつけた。
ワタルが耳元に唇を近づけて、囁く。低音が鼓膜を揺さぶって、それだけでトびそうだった。
「よく感じてくれよ」
ふ、と。その言葉を聞いて、ワタルの横顔を思い出した。博物館で、化石を愛おしそうに見下ろしていたワタルの横顔だ。
横顔からクローズアップしたのは、ワタルの手つき。指の動き。化石をなぞっていく、あの、手のひら。手の皺。
…………そう、そうだ、この目……この、熱……だ。
「……、き……」
腕に力を入れて、持ち上げた。ワタルの背中にしがみつく。汗でしっとりしていた。
背骨をゆっくりとなぞっていく。硬い感触が指の腹を押しつぶす感覚に、心底ほっとしてしまう自分がいる。
皮膚を感じる。肉を感じる。骨を感じる。
柔らかさを経て、硬さだけが残る。
目を瞑った。ワタルの骨だ。ワタルの骨に、指の腹を沈めていくように触れた。
彼の背骨が水底に沈んでいく様子が、頭の中でぽっかり浮かんだ。皮膚がとけて、肉がばらばらに剥がれていく。
砂浜に沈み、泥土に埋もれて、肉が朽ちる。それから、海は引き、土地にむしタイプのポケモンが這う。それから、芽吹きが始まっていく。ゆっくりと、生命の循環の一部になっていく過程を、スローモーションで頭の中を再生していった。
溶けていくのか。やがてきみも。そしたらいったいどこへ辿り着く。
きみは、きみの人生において変わらないものの方が多い、って言ったけれども、だからこそボクは、きみの中に埋もれているものを、見つけたい、って思うんだ。
それなのに、きみっていう生き物は、骨だけになったとしても、目玉はそのまま残るんだ。ボクをずっと、その目で見つめてくる。その目を見るたびに、ボクは、
「く……ぃ…ちぎれ、そう」
骨の形を確認し、ワタルの硬さを指の皮膚越しにじんわりと感じた。
「ぃ、……ん、ンッ……」
骨だけは残る、その安心感に今はしがみついてみたかった。
きみの肉が、ボクの中に溶けていくような感じがして、少し変な気分だ。
柔らかいものがどこか苦手だったりする。残らないものだと、感じているからだろうか。……頼りないものだと、感じてるからだ。
「……また、複雑なことでも考えてるのか」
ワタルが、ボクの額に滲む汗を指で拭って、へばりついた前髪を払う。そして、唇を押し当てるようなやさしいキスをおでこにしてきた。
「複雑なんかじゃ、ない……よ、全然。昼間のこと」
「昼間……へぇ。どっちだろうな。……海か、それとも」
「おとといの、昼、だよ」
遮るように薄く吐きだした言葉を、ワタルはキスをして飲み込んだ。
「ん……ぅぅ」
喘ぎ声がくぐもったまま、ワタルがゆっくりと律動を繰り返す。ぎ、と背骨に爪をひっかけて、足も背中に絡ませた。背中の皮膚が破け、ボクの爪の形に合わせて線を描いて血が滲んでいったのが分かった。汗と絡みあって、ますます背中がしんなりしていくように感じる。
吐息を漏らしながら、口を離す。息を吐くと、どろりと、唇から飲みきれなかった唾液が垂れていった。ワタルがキスをして舐める。ちょっとぬるぬるしていた。
「きみは、考えごとをすると、目の焦点が一点に定まる癖がある」
「へぇ……そうかあ……」
ワタルは、ボクになにか見つけるとそうやって丁寧にも報告してくる。それはボクも同じだけど。いつからだったかな。そうやってお互いの特徴を口に出し始めたのは。
ワタルがゆっくりと入ってくる。匂いまるごと背負い込んで、深くつながったとき、今度はボクの中の肉が溶かされていく感じがした。ぐりゅ、と。
「んッ……」
「……ッ、話してほしい」
「……化石の復元?」
ボクがまことしやかに呟くと、ワタルは目を細めて笑った。眉を垂らして。どこか、少し寂しげにもみてとれる表情だった。
「分かってるくせにな」
その顔は、たまらなく好きな顔だ。
その瞬間、腰の奥底が甘く痺れ、ズンッと重くなった。足のつま先を丸め、ワタルに足をまきつける。太ももがぴったりとワタルの脇腹にへばりついた。
「イッ……く、……イきそう」
コク、と頷いたのを見て、瞼の裏が真っ白に弾ける。
「ぅっ……ッ……ウッ……!」
お腹を丸めて、身体が震える。ビクビクッ、と。震えたのはボクだけじゃなかった。ワタルも、少しだけ顔を顰めていた。気持ち、よさそうに。
そうしてお互い強く抱きしめあった。呼吸を落ち着かせて、身体が離れる。ぐっちょ……という音を立てて、お腹の間でかき混ぜられた精液が糸を引くのが、なんだかとてもいけないものを見てしまった気分になった。
ぼー、と焦点が定まらない目で見下ろすボクを見て、腰に手を伸ばしたワタルが、ゆっくりと持ち上げ、中から性器を抜いた。
そして、太ももの上に座らせると、頬に優しく触れて、
「……満足したか、」
と言っておでこをぶつけてきた。
その声を聞いて、すごく、ムラっとした。
「……っ、くも、」
「ん……」
「きみも、……ッ感じて」
ぎゅーっと、そのからだを抱きしめた。腕も使って、足も絡めて。今度は、ボクがきみの耳元に唇を寄せる。
「ボク、も、きみのすべてが知りたい」
から。
「ッ……!」
そう言って、たえだえの体力ぜんぶ、使い切る勢いでワタルの胸に飛びついた。ぐるん、と視界が回る。半ば襲いかかる形で、ワタルを押し倒した。ベッドが軋む。跳ねて、沈んだ二つの肉体。
思いがけないことに戸惑ったワタルに、すかさず跨る。
「あつい」
暑い。熱い。あつい。もう我慢ならないな。
シャツを乱暴に脱ぎ捨てた。腕輪も、指輪も外してベッドの下に投げ捨てる。汗がべっとりで、少し時間がかかった。
ネックレスも外そうとしたけど、汗で滑ってしまい小さな金具を上手く外せなかった。あぁ、もういい。このままでいい。
「はぁ……ッ……ん、……はあッ」
腰を高く上げて、つぷ、と、二つの指をお尻の穴に入れる。見せびらかすように、極めて大胆に広げる。きみのものが、ごぽ、と音を立てて落ちていった。太ももを伝ってシーツを濡らす。ぎゅ、と、シーツを掴んで、足に力を入れた。騎乗位の体勢のまま、ワタルを見下ろす。
「ッ……だぃ、ご」
ぶわ、と、蒸気があがった。ワタルの顔が真っ赤になっていた。見下ろした光景は、最高だった。グラグラする。
顔を伝う汗は、きみの肩口に吸い込まれるように落ちていった。そこには、ボクが思いっきり噛んだ痕があって、滲んだ血がボクの汗が混ざり合う。おはじきのように透明が混ざった血は、肩を滑ってシーツに落ちていった。ぐしょ、と濡れるのが、扇情的だった。
「ね、……わたる」
湿気は毒をまねくんだ。レアルガーの色をふ、と思い出した。血の匂い。血の色。焦げ臭さ。鉄臭さ。博物館の、きみの横顔。海に引きずりこまれたときの、きみの目。女の人に囲まれた困り顔。走馬灯のように、早送りされて流れていく。
あつい。
ほんとうに、……あつくて、いきぐるしい。
意識が飛びそうになって、かぶりを振った。首にかかるネックレスがやたらと重く感じる。
もう少し耐えて。ボクは、まだその先を触れていたい。指で触れて、なぞって。輪郭を確かめ、骨の形を残していく。ワタルが化石に触れたときの、手つきを辿っていくように。
「覚悟するのは、きみもだ」
息を荒らげて、はっきり言った。
腰を沈ませる。ワタルが、ぎょっとして、起き上がろうとする。させないから。手で腹筋を押してねじ伏せた。
まだ続ける体力が、ぼくに残ってないと思ってたんだろ。
足をすくわれたね、ワタル。今度は、ボクがきみを引きずりこんであげるよ。
「ッ……! ッまて、」
「ッ……ぁ……ふ……」
「むりするな、ダイゴ。……おい」
「ッは……ぁ、……ん…………ぅ」
「……ッ……ぐ」
波の音が、腰からせり上がる。快感の波に。
もみくちゃに揉まれて、ボクたちは、一緒に溺れていった。
呼吸の仕方は、きみから学んだ。
キスを交えながら、目を瞑ってシーツの波に沈んでいく。
