プツ、と、つながった。数秒、静かな音が続いてからエントリーコールの相手はため息をついた。
『……どこで、ボクのエントリーコールを?』
にしてはどこか面白そうにしている声だった。
「俺が誰かとかは聞かないんだな」
『きみ以外、心当たりがないから』
カイナシティの灯台に寄りかかりながら、ポケナビを手に取って海を眺めた。水平線には太陽の足が浸かっている。もう少しで、日没だ。眩い白い光が、穏やかな橙色に深まる時間帯。
ここには誰もいない。みな、きみに夢中になってモニターのところへ行ってしまったから。
当の本人はそんなこと知らない。
『故障したポケナビの心配、していたんだけど。……きみが、持っていたんだね』
「渡されたんだよ。彼、とても困っていた」
『あぁ、悪いことをしてしまったな』
少し、沈黙。ダイゴのほうはやはり気まずいところがあるらしい。それもそうだ。あんな別れ方、誰でもしこりが残ってしまう。けど、
俺は。
『悪いけど、いまボクには時間が』
「なら、直球に言う」
『……どうぞ』
息を吸って伝えることはたったこれだけ。
「きみに、会いたい」
ダイゴが息を飲んだのが分かった。俺は、もう一度息を深く、溜めて、
「会いたいんだ」
『ッ…………』
「会って、話をしたい」
『ッち……ょっと、待って。突然なにを』
「共有したい。今の気持ちを」
そういえばエントリーコール越しの声が静かになる。
だから。と、隙を許さずに俺は続けた。
「逃げるなら、きみを、どんな手を使ってでも探しだす」
また、ダイゴが息をのんだ。その表情も、その様子も、エントリーコール越しでは何も分からない。彼が、青ざめているのか、赤らめているのか、また、違う反応なのか。でも、それでも。
きみに、伝えたいことがある。
どこにいようとも。地の果てでも。
『………………同じことを』
少し躊躇ってダイゴは言葉を続けた。なにか、覚悟を決めたかのような声で。
『同じことを、考えていた、んだ』
だから。と、先の言葉が熔けて消える。
「…………」
『…………』
「続けて」
『…………ッ……』
「怖がらないで」
『……………………』
俺は、なるべく声をやわらげて、
「……ダイゴ」
きみの、名前を呼んだ。
『きみ、に、』
コク、と、頷いた。姿が見えなくとも。はやくその先を聞きたいから。きみからの返事を確認したいから。
共有したいと、心の底から願ったから。
でも。
『……──み、……ぃ──』
突然、ダイゴの声が途切れる。
「……、?」
続いた沈黙に彼がまだ返答に迷っているのか、と思ったがあまりにも静かすぎる。
嫌な、予感がする。
「ダイゴ」
息づかいすら聞こえない。何故だ。画面にポツ、と雫が落ちた。
雨が、迫りくる。きみの声をかき消してしまうように、その音は、だんだんと強まってくる。
「ダイゴッ!」
そのとき、天気が突然癇癪を起こしたのか、バケツをひっくりかえしたような雨が、襲いかかった。
人々の叫び声が飛びかかる。歓声は、悲鳴に変わる。
